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退職金

1 退職金の発生根拠

退職金は、就業規則や賃金規定などに規定があると発生します。通常は、最終月の基本給×勤務年数×功績倍率により計算します。30年、40年勤続した従業員の場合、数千万円になることもあります。

2 退職金の減額や不支給は難しい

退職金制度は一旦導入してしまうと、就業規則や退職金規程等で規定した要件を満たす従業員が退職した場合には、退職金を支払わなくてはなりません。
退職金は、賃金と同様、労働者の重要な権利として法律で守られています。会社の資金が不足しているからといって、退職金を支払えないでは済まない問題です。
退職者と話し合いにより解決できれば問題ありません。しかし、訴訟にまで発展してしまうケースが多々あります。「退職金事件」は、「解雇」や「未払残業代」と並ぶ、非常に数の多い訴訟累計です。

3 退職金の支払が難しくなったらどうすべきか

会社の経営が傾き、就業規則どおりに退職金を支払うことが難しくなったら、実際に従業員が退職し、退職金支払義務が生じる前に、それらの規定の変更を検討すべきです。
会社にとって、これまで会社のために後見してくれた従業員に対し、退職後もその生活を保障することは、非常に重要な責務です。
しかし、会社の財務力に較べて過大な退職金支払義務が発生してしまった場合、そのままでは、退職金債務で会社が倒産してしまう危険もあります。会社にとって、最も重要な責務は、会社を存続させ、会社で働く従業員や、会社の取引先の生活を守ることです。
そのためには、退職金の減額や廃止も検討しなければなりません。

4 退職金に関する就業規則を変更する方法

就業規則を、従業員にとって不利な方向に変更するには、原則として、従業員の承諾を得る必要があります。会社としては、まずは資料を整えて、従業員と誠実に交渉し、退職金の減額・廃止について理解してもらうよう努める必要があります。
単に退職金を減額・廃止するだけでは、従業員の納得が得られない場合もあります。その場合は、退職金の減額・廃止と引き替えに、定年年齢を引き上げて、退職金ではなく給与の形で、従業員の生活を保障するという方法もあります。

これは、法律面と経営面の両面で、非常に難しい問題といえます。お困りの場合は、弁護士に相談してみることをお勧めします。




未払い残業代と労働基準監督署

1 未払い残業代とは

未払い残業とは、残業代を払わずに残業させることで、サービス残業とも呼ばれます。
残業代の未払いが発覚すると、労働基準監督署から「是正勧告」されることになります。「是正勧告」に従って是正しなければ、書類送検となり、罰せられる可能性もあります。

この「賃金不払残業」の「是正勧告」によって、上場企業が数億円、数十億円支払ったケースもあります。このような場合、どのような対応をとるべきか、お伝えいたします。

2 是正勧告とは?

「是正勧告」とは、労働基準監督署による警告書です。
会社経営者が従業員を雇用するとき、守らなくてはならないルールが「労働基準法」です。このルールに違反して、出されるのが、「是正勧告書」という名の警告書です。この罰則をみると「6ヶ月以下の懲役」「30万円以下の罰金」などとあります。

行政指導には強制力がないので、「是正勧告」には従わなくてもよさそうに見えます。しかし、「労働基準法」の中に、上記のように懲役又は罰金というペナルティーが設けられています。「是正勧告」に従って是正せず、情状が悪質ということになれば罰せられる可能性もあります。

「是正勧告」に至る「労働基準監督署」の「調査」のきっかけは、従業員(元従業員を含む)からの申告が大きい割合を占めています。
したがって、労基署の調査も、会社の労働時間管理の実態を理解した上で行われます。

3 労働基準監督署(労基署)への対応

労基署が調査に入り、労基署が様々な資料を入手した後では、使用者が労基署に対して対抗する手段はほとんどありません。
しかし、労基署に提出した資料にはあらわれない、使用者としてどうしても主張したい事情もあるかと思います。
例えば、労基署は、パソコンのログオン、ログオフ時間を元に労働時間を計算することが多いのですが、当該労働者がパソコンでその時間まで仕事をしていたのかは本当のところはわかりません。途中で夕食を取るためパソコンの電源をつけたまま机を離れたかもわかりません。業務終了後、同僚と雑談していたかもしれません。

また、タイムカードについても、職場の親睦会などがあり、タイムカードの時刻が終業時刻後相当遅くなって打刻されているような場合もあるかと思います。
このような事情が、証拠により立証できるのであれば、労基署に反論できる可能性があります。

まずは弁護士にご相談下さい。




従業員の解雇

日本の労働法制では、従業員を簡単に解雇できません。

従業員に能力がない、そのような場合、経営者はつい、「解雇して当然」と思ってしまいがちです。しかし、日本の労働法制では、従業員を解雇するのは非常に難しいです。

そこで、下記のような方法で、合意退職とするのが順当と言えます。

1 指導・教育の実施

たとえ能力がない場合でも、直ちに従業員を解雇するのは難しく、かつ裁判所は、会社に対して、従業員の能力がないことを示す証拠を提出することを求めます。能力が無いということを立証するのは大変難しいのです。証人になる人事担当者、総務担当者の精神的負担は相当なものです。

したがって、会社と従業員が合意して退職する合意退職がトラブルの防止としては有効です。

まずは、会社が、能力のないと考える従業員に対して、十分な指導、教育をしてください。その際、指導、教育の証拠を書面として残してください。
そして、指導、教育の結果、どのように当該従業員が変わったのか、あるいは変わらなかったということについても、書面として記録を残してください。

2 配転の実施

指導・教育でも、従業員の勤務成績が変わらない場合は、能力を生かせると考えられる部署への配転を検討してください。
裁判所は、解雇に至るまで会社が考えられる手段を全てとったのかを重視します。

なお、日本の労働法制では、解雇は非常に難しいですが、配置転換については、比較的柔軟な態度を示しています。そこで、従業員が配置転換に反対したとしても、業務命令で配置転換することを検討すべきといえます。

3 退職勧奨の実施

配転しても、十分な能力を発揮できない場合は、就業規則に基づき降格、降給を検討します。そして、実際に降格、降給をする前に、退職勧奨をするという方法があります。
退職勧奨に応じるのであれば、退職金を上積みするということも有効です。家族構成に応じて、金額を加算するという方法もあります。

退職に合意した場合は、きちんと合意書を作成してください。合意書の文言については専門家に相談してください。文言に不備があれば、トラブルが再燃する可能性もあります。

退職勧奨をする際には、脅迫、詐欺により退職を強いられたと言われないように、必ず2名で面接に当たるべきです。録音や、面談メモなど、証拠を残すようにするとよいです。

業績不振による人員削減も含めて、今の日本の労働法制では、従業員を解雇するのは非常に難しいです。

トラブルを避けるには、まずは弁護士にご相談されることをお勧めいたします。




労働紛争

企業から相談を受ける法律問題の中で、1番数が多いのは、従業員とのトラブル、すなわち労務問題です。

1.労働紛争とは

労働紛争で多いのは、未払い残業代金の問題、パワハラ・セクハラ、解雇や退職をめぐる問題などです。就業規則の不備、従業員とのちょっとしたトラブルといった一見些細に思われた問題が、時に労働組合を巻き込んで、経営の根幹を揺るがす大問題に発展することもあります。

2.労働紛争への最も効果的な対策

労務トラブルは、普段から問題意識を持ち、然るべき内部ルールを定め、足下をすくわれないようにすることが最も効果的な対策です。
そのような内部ルールが未整備な場合には、早急に専門家に相談し体制を整えることが肝要です。また体制が不十分なために問題が顕在化してしまった場合には、問題の所在を的確に見極め然るべき処置をした上で、一刻も早く前向きなテーマに取り組むことが、会社にとっても従業員にとってもベストな対応です。

3.労働審判や労働訴訟への対応

従業員に労働審判を起こされた、労働訴訟を起こされたなどといった場合には、スピーディかつ、適切な対応が求められます。

日本の労働法制は、労働者を厚く保護しています。企業にとっては厳しい話になりますが、労働者に行動を起こされたら、企業は非常に厳しい立場に立たされたと思って間違いありません。

しかし、労働者による主張には、不当な主張が含まれていることもあります。実際以上に水増しした残業代を請求してきたり、自らの落ち度を棚にあげて解雇の無効を主張してきたりした場合です。このような場合、企業としては、他の真面目な従業員との関係でも、安易に妥協することは好ましくありません。

裁判での勝敗は、どれだけ証拠を集められるか、自己に有利な事実をどうやって効果的にアピールできるかで決まります。

労務問題でお困りの場合は、弁護士にお気軽にご相談下さい。




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