刑事事件と弁護士

1 刑事事件での弁護士の役割

刑事事件における弁護士の役割には、多様なものがあります。
弁護士は、身柄拘束をされている被疑者・被告人と面会して、家族や関係者との連絡を取り次ぎます。
捜査段階では、検察官宛てに意見書を作成して提出したり、実際に検察官や裁判官と面談して、被疑者の言い分を代弁します。
裁判の期日には、被告人とともに出席して、証人尋問を行ったり、意見を述べたりします

2 刑事裁判での役割

起訴されてしまった後における弁護士の一番重要な役割は、検察官が提出してきた証拠や裁判官の言動などから事件に関する見通しを立て、本人に有利な事実や証拠を落とさずに裁判所に提出すことです。

特に逮捕、勾留期間中の取調べでは、被疑者に対しての当たりが厳しく、時として真実とは異なる内容でも認めさせられてしまうことがあります。しかし刑事裁判では、「自白は証拠の女王」という言葉があるように、そのように強引に認めさせられた自白であっても、裁判では重要視されてしまうことがあります。

そこで、弁護人としては、粘り強く本人に有利な事実や証拠を探す必要があります。

また、被害者との示談交渉をしたり、その他の有利な材料を集め、検察官と交渉して、不起訴にしたり、量刑意見を軽くするように努めることも重要な弁護活動です。

3 私選弁護人と国選弁護人

刑事裁判では、被疑者または被疑者の親族が弁護士を選任しなければなりません。このように、被疑者自ら、または被疑者の親族が選任した弁護人を、私選弁護人といいます。

これに対して、資力のない者については、国選弁護人の制度があります。国選弁護人というのは、国の費用負担で、弁護士を付ける制度です。

国選弁護人は裁判所が選任するため、被疑者自身が弁護士を選ぶことができません。
もちろん、国選弁護人の中には、本当に真剣に事件に取り組む弁護士もいます。 しかし、残念なことですが、中にはまったく何にもやらない弁護士もいます。

私選弁護人の場合は、気に入らなければ解任することができます。しかし、国選弁護人は、被告人や家族が自由に解任することはできません。

そのような意味でも、可能であれば、私選弁護人を選任するのが望ましいと考えます。