損害賠償の現実

傷害事故(後遺症が残った場合)の損害額の計算は、以下の表のA~Eの合計額です。

A 治療関連費

治療費・付添看護費・入院雑費・通院交通費・装具代など

B 休業補償 

事故で減少した収入の補償

C 入通院慰謝料 

受傷(入通院)による精神的苦痛の補償
※入通院期間と傷害程度による基準がある。

D 後遺障害逸失利益 

後遺症により今後予想される収入減少分の補償
※事故前の年収や労働能力喪失率を基準に算定する。

E 後遺障害慰謝料  

後遺症による精神的苦痛の補償
※後遺障害の等級による基準がある。

当事務所に相談に来られる方からよく聞く声として、「相手方保険会社や相手方弁護士から示談の提案書が送られて来たけれど、その見方が分からない」というものがあります。そこで、示談の提案書に記載されている損害賠償の各項目に関する注意点を記載いたします。

治療費

相手方保険会社や相手方弁護士は、独自の判断により医療機関に対するあなたの治療費の支払(立替払い)を打ち切ることがあります。そして、それまでに支払った治療費のみを、その交通事故により生じた治療費の総額として示談の提示をしてくることがあります。
しかし、相手方保険会社が支払い(立替払い)を打ち切った後にあなたが支払った治療費であっても、それが適正なものであれば治療費として請求できる可能性があります。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、入通院日数に応じた基準により金額が決まります。この点、相手方保険会社や相手方弁護士は、自賠責保険基準や任意保険基準をもとに金額を提示してくることが多いですが、それらの基準にもとづく金額は裁判基準にもとづくものと比べると低額であるのが通常です。

後遺症(後遺障害)

後遺症に基づく損害賠償には、後遺症によって仕事が制限され収入が減少する分の補償である「逸失利益」と、後遺症により生じた精神的苦痛に対する「慰謝料」の2つがあります。

「逸失利益」は、交通事故前の基礎年収×労働能力喪失割合×労働能力喪失期間という計算式で算出されます。相手方保険会社や相手方弁護士は、このうち労働能力喪失割合をできる限り少なく見積もって、逸失利益を低く算定しようとすることがあります。また、労働能力喪失期間をできる限り短く見積もろうとすることもあります。

「慰謝料」は、後遺障害の重さである後遺障害等級によって定まることとなりますが、相手方保険会社や相手方弁護士は、自賠責保険基準や任意保険基準をもとに、裁判基準とは比べ物にもならないくらい低い金額を提示してくることがあります。

過失相殺

過失相殺は、交通事故において被害者にも落ち度(過失)がある場合、その過失の割合に応じて損害賠償額を減額するための項目です。
過失の割合については、基本的な基準はありますが、最終的には当該事故の具体的な状況により決まるものです。しかし、相手方保険会社や相手方弁護士の提案書の中には、過失の割合につき、当該事故の具体的な状況について考慮せず、基本的な基準を機械的に適用して決めてしまっているものがあります。

相手方保険会社や相手方弁護士の示した示談の提案書について上記のような疑問を感じられる場合は、当事務所にご相談ください。