売掛金の回収

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売掛金回収の最終手段は、裁判→強制執行です。しかし、裁判には、時間とコストがかかりますので、必ずしも最善の方法とはいえません。弁護士が債権回収の依頼を受けた場合も、まずは裁判によらない回収方法を検討することになります。

1 担当者による交渉

弁護士が正面に出ると、交渉が有利に進むことがある反面、相手が構えてしまい、かえって態度を頑なにしてしまうこともあります。

そこで、状況によっては弁護士名で内容証明郵便を送付する前に、当事者の方に交渉をしていただくことがあります。もちろん、交渉のプロである弁護士が、いつ、どのようなことをすれば最も交渉がうまくいく可能性があるかについてアドバイスさせていただきます。

2 内容証明郵便による催告

内容証明郵便とは、誰が、いつ、誰に対して、どんな内容の文章を発送し、相手がいつ受け取ったのかを郵便局が証明してくれる制度です。後で「言った言わない」「そんな書類は届いていない」という言い訳を封ずることができます。

弁護士名の内容証明郵便を送付することで、相手方に「こちらが本気である」という意思を知らせることができ、今後の交渉を有利に運ぶことが可能になります。

3 弁護士による電話や面談による催告

電話や面談による直接交渉することができる状況であれば、まずは交渉による解決を試みるべきです。弁護士が乗り込んできたということで、支払の約束をしてもらえることもあります。また、弁護士は交渉のプロですから、双方にとって納得できる条件で和解できることもあります。

4 公正証書の作成

公正証書とは、全国各地にある公証役場に勤務している公証人(30年以上の実務経験を有する法律実務家の中から、法務大臣が任命する公務員)が作成する公文書です。

公正証書には、高い証明力と債務名義としての機能があります。売掛金の内容を公証証書にしておくと、裁判手続をせずに、強制執行が可能です。公正証書を作成すれば、債務者に対して強い心理的圧力を与えることができるとともに、万一支払が滞った場合には強制執行をすることができるのです。

5 債権譲渡

どうしても相手から売掛金等を回収できない場合、相手方が第三者に対して持っている金銭債権がないか調べます。そして、例えばX社に対する売掛債権を見つけた場合、X社に対し、相手の会社への金銭債務を、あなたの会社に支払ってもらうよう交渉します。合意ができた場合は、あなたの会社、相手方、X社とで契約を支払に関する合意を結んだ上で、X社からあなたの会社に支払をしてもらいます。

6 支払督促

支払督促は裁判所からに一方的に発してもらう支払督促状のことです。裁判所からの命令であり、無視すると強制執行申立てにより法的強制力まで付与されてしまいますので、相手に対する心理的圧力はかなり期待できます。

支払督促書面が来ただけで支払ってくれることもあるでしょう。

ただし、相手方の言い分を全く聞かずに自分の言い分を一方的に発することから、相手に言い分があれば(たとえ言い分がなくても)簡単に異議を申し立てられ、通常の訴訟に移行してしまうという難点もあります。